2005年10月05日

ニンニクくさい

珍しく風邪を引いた。
基本的に医者嫌いで薬嫌いの私は、いつもよりも多めの睡眠と気合と、そして民間療法でなんとか風邪をしのぐことにしている。風邪を引いた時にどのような対処をするのかは、それぞれの家庭によって違いがあり、それらを聞き集めていくと結構面白そうなネタ帳になりそうな気がする。ちなみに、子供のときには「風邪を引いたら温かいものをたくさん飲みなさい」としきりに言われ続けた。具体的にはホットミルクであったり、おばあちゃんのいるおうちでは生姜湯だったりもするだろうが、この「風邪を引いたら温かいものを飲む」というのは日本の常識だったと思う。ところが小学校高学年になったあるとき、NHK教育テレビでセサミストリートを見ていたら、アメリカでは「冷たい飲み物を沢山飲みなさい。できればオレンジジュースがいいですよ」というシーンが出てきて驚いた記憶が鮮明に残っている。そうかアメリカでは冷たいものを飲むことになっているのかふーん。と子供心にショックを受けた。日本が正しいのか、アメリカが正しいのか。どっちなんだろうと混乱した。そのあたりから私の中で、「健康の常識」に対する猜疑心が高まってきたのだった。だからどうしても、みのもんたが好きになれないのだ。

うそです。そこまで深くは考えてないですよ小学生の私が。

それでだ、すぐに話がわき道に外れてしまうのだが、今回の私の風邪である。
布団の中でふせっていると、妻が「たまご酒つくろうか?」と言ってくれた。彼女の家では、風邪にはたまご酒だったらしいが、私にとっては子供のときからの定番がある。それはニンニクをすり下ろした味噌汁だ。薬効的にどうこうというよりは、子供のときから風邪の時にはこうやってきた。という一種の刷り込み現象なのだろうが、熱があって体がだるい時にはこれが一番効く。   ・・・ような気がするのだ。

布団の中でいつまでもうだうだしているのも体に悪そうなので、ちょっと頑張って起きて自分でつくる。ニンニクをふたかけら、おろし金ですりおろす。すりおろしたおかげで部屋中がニンニクくさくなる。これを軽く煮立てて後は味噌だけ。たったこれだけの味噌汁だが実にこれが強力きわまりない。ふたくち飲むだけで全身から汗が吹き出る。 ううう。かなり強烈だ。ちょっと今回は、ニンニクの量が多すぎたかもね。寝室でも妻はニンニク臭さに顔をしかめる。私の体全体からニンニク臭が湧き上がっているという。ニオイが映る特殊カメラを用いたら、真冬のラガーマンから立ち上る水蒸気のように、私の体中からニンニクの湯気が立ち上っていたに違いない。

ところで、人間の感覚細胞の中で一番簡単に麻痺するのはどこかご存知だろうか。それは嗅覚細胞だ。同じニオイを嗅いでいるとすぐに鼻はバカになり、そのニオイを感じなくなる。世のオバサンたちが香水をつけてしばらくして、「あれ?まだ香水の香りが弱いかな?」と思ってまた香水をつける。またしばらくすると「うーん。また弱くなったわね」とさらに香水をつける。それはあんたの鼻が麻痺してるだけなんですから。そして電車の中で強烈な匂いを車内中に撒き散らして周囲の人を恐怖のどん底に落としたりするわけです。

本題は私の風邪だ。どうもすぐに話がそれるな。
一晩たって、自分ではニンニク臭も抜けたと思っていた。だって自分ではまったく匂わないんだもの。
そして今日は借りていた本の返却予定日だったことを思い出し、近所の図書館に行く。カウンターに本を返却し、さて、次になにか面白そうな本はないかと書棚を物色していると、私の隣で本を立ち読みしていたおじいちゃんがボソリとつぶやいた。

「ん? なんだかニンニクくさいな」
そう言って読みかけの本を鼻に近づけてクンクンと嗅ぎ、「この本か?」と不思議そうな顔をすると、パタンと閉じて書棚に押し込み、去っていった。ごめんよじいさん。ニンニクくさいのは本じゃなくて私なんだよ。

ひとり書棚の前でニヤニヤと笑った。私は今晩も、吸血鬼にだけは襲われる心配はなさそうだ。もっともこんなオヤジを襲う吸血鬼など居まいが。
posted by ちゃきん at 21:48| Comment(9) | 日記

2005年10月27日

佐渡のイラストレーター。ジョニ・ウェルズさん。


「島へ。」という雑誌から仕事を頂いて、26日に佐渡へ行ってきた。取材先はジョニ・ウェルズさんというカナダ出身のイラストレーター。現在読売新聞の東京版で週に一度連載をもっているらしい。ジョニさんは水彩画を中心としたイラストを描いているが、カナダ、あるいは東京に自分の絵を送るにも、スキャナで読み取ったデータをメールで送るだけ。今では自分の仕事で佐渡から出ることはほとんどないという。そういえば、今回の私も、編集部の人とは実際に会ったことなど一度も無い。電話とメールで連絡を取り合い、必要なものは宅配便で送る。それだけだ。私の担当は女性の方なのだけれど、どんな顔をしているのかね?



なかなか興味深い話を二時間近くにわたって聞かせていただいたが、本で記事になるのは2ページだけ。今回は写真を大きめに使用するとのことで、文字数にすると1400文字しかない。1400文字というと、小学生のときの作文の時間に400字詰原稿用紙を埋めるのに四苦八苦した記憶のある人にはとても多いように思われるだろうが、実のところ活字にしてみるとほんのわずかの量でしかない。ちなみに今日の日記は、ここまでで既に文字数が約300文字だ。パソコンであれこれタイプしていると、1400文字などあっという間に埋まってしまい、あれを削りこれも削り、それでも結局1600文字をちょっと超えてしまった。


今回は写真も含めて完全に自分1人の取材で、逆に言えばある程度はデザインの自由度はあるので、もうこのまま1600文字でいいや。と、そのまま入稿した。あははは。


で、文字数の関係でどうしても書けなかった部分も含めて、ちょっとここに書きたいと思う。


ジョニさんの心の中では、カナダよりも佐渡のほうが「地球の大きさをダイレクトに感じることが出来る」土地なのだそうだ。


カナダの場合は土地が広すぎて、海は海。山は山と限定されている気分がしていたのだそうだが、佐渡ではちょっと歩けば海。ちょっと走れば山というように、程度の良いコンパクトな広さの中に地球のいろいろなものが凝縮されているようで、それがとても気分が良いらしい。特に思い出深いのはドンデン山頂上の西側で海に沈む夕日を眺め、その翌日にはそこからわずか数百メートルの反対、東側に歩くだけで、海から昇る朝日を眺めることが出来るのだという。また、地球が平坦ではなくて球であることも佐渡に来て体感できたという。佐渡ではイカ漁が盛んなので、夜、沖には沢山の漁火(いさりび)が現れる。山を登る前に漁火の数を数えると、5つ見つけられる。そこから徐々に登り始めると、5つあった漁火が6つになり7つになり、そして頂上に登ると10の漁火を見ることが出来る。そして山を降りると、10あった漁火が9つになり、8つになり・・・。そうやって、地球が球形をしており、高い場所に上ることでより遠景が見えるという体験を出来る。それがジョニさんはとても嬉しいのだそうだ。


彼はとにかく何でも「自分でやってみる」人だ。佐渡では能や人形浄瑠璃などの伝統芸能が、今でも庶民の娯楽として生き残っている日本で唯一の場所だと私は思っているが、ジョニさんはそんな佐渡にあこがれてカナダからここに移り住んだ。来た当初から佐渡の文弥人形第一人者に教えを受け、操るだけでなく、その人形までも自作してしまった。


「作り方なんて全然知らなかったけれど、見よう見まねでやってみたら、出来てしまった」とニヤリと笑う。そんな彼は今、自分の家の庭に茶室を建築中だ。さすがに設計図面までは引けないのでそこは本職に頼んだが、いわばプラモデルを作るノリで、実際に木を削り、組み上げるのはジョニさん自身だ。ただし、これも本職の大工ではないのであちこち隙間が開いていたりするのだが、「自分で使うのだからそれで十分」と、細かいところは全く意に介さない。茶室の名がまた面白い。「個乃庭 堂」と書いて読み方は「このていどう」。そう、つまり「この程度」なのだ。自分で作って自分で使ってそれで満足だから、この程度で十分ですよ。と、そういう意味らしい。そんなジョニさんのホームページはこちらだ


ジョニさんがあちこち改造している家は、実は借家だ。古い家なので、骨組みをいじらない限りは内部に手を入れるのは自由であると、大家から許しをもらっているとのこと。家賃は教えてくれなかったが、「庭を含めてのメンテナンスも込みだからね」と、破格の安さで借りているらしい。実は佐渡にはこのような、破格の値段で借りられる一軒家はかなりあるらしい。何故かというと、佐渡を出て暮らしてはいるが、それでも佐渡に残してきた家を手放すほどには気持ちが離れていない。そんな人が多いらしく、長期にわたって使ってくれる人に貸しているのだ。ただし、先祖から受け継いだ大切な家だから、どこの誰とも知らぬヤツに貸すのもイヤだ。その結果、不動産屋は通さずに、友人や地域がらみの人づてによって紹介された人にのみ貸す。そんな風潮があるらしい。事実、佐渡でのアパートや賃貸住宅は決して安くはない。あくまでコネクションによって借りられる物件のみ、広い一軒家が破格の値段で借りられるとのことだ。佐渡移住に興味のある人は、まずは観光で何度も訪れ、そこから現地の人と仲良くなって紹介してもらえるようになればなんとかなる。かも知れない。



東京の編集部が、取材費節約のために佐渡汽船とタイアップ。チケットはフェリー代も含めて提供してもらった。乗船費用はともかく、クルマを乗せると往復2万円以上かかる。前回の佐渡取材ではレンタカーを借りたのだが、今回はフェリー代も出していただけるということで、自分の車で佐渡に乗り込んだ。


しかし、正直に言うとあまりこれはありがたくなかったのだ。要するに、クルマをフェリーに乗せる手続きに掛かる手間と、出港40分前には手続きを済ませてクルマを所定の位置に待機させておかなければならないことを含めると、日帰り程度だったら明らかに現地でレンタカーを借りたほうが楽なのだ。



帰りは16時10分に佐渡を出港。港を出てしばらくすると、船内放送で「夕日がとてもきれいです。ぜひご覧下さい」のアナウンスが流れる。うん、なかなか良い心遣いだな。



前回は強引にデジタルカメラで仕事をさせていただいたが、今回は「ポジフィルムでお願いします!」と、きちんと指定されたために、2年ぶりくらいにNikon F3を使用した。きちんと写っているかとても不安で、ひとつのシーンを念のために何コマも撮る。そのため支給されたフィルム6本をあっという間に使い切ってしまった。仕上がってくるまでとても不安だったが、「まあまあなんとか」という感じだ。ただ、薄暗い室内の雰囲気を大切にしようと、フラッシュなしでの撮影で、しかも三脚を持っていかなかったために手ぶれを起こしていないかが不安。私の持っているルーペではそこまで確認できない。こればっかりは本の仕上がりを待つしかないだろう。ドキドキ。 ちなみに、ここに載せている写真は、予備に持っていったデジタルで撮影したものです。


 


で、ここまでで約2700文字。ほらね、1400文字なんてあっという間にオーバーしてしまうでしょ。

posted by ちゃきん at 22:25| Comment(12) | 日記